『東京の子』連載開始

電子雑誌「文芸カドカワ」にて『東京の子』の連載が始まりました。

私は18歳で東京にやってきました。
浪人しているとバブルが弾けて夜の街は暗くなりました。友人たちは就職氷河期の第1世代になり、企業の欠員は派遣社員で埋められるようになっていきました。終身雇用と年功序列はもはや歴史上の出来事です。
次はなにがくるだろう、そう考えたことが『東京の子』のきっかけになりました。
舞台はオリンピックを終えた2023年の東京。近未来の「異国情緒」と、失踪した外国人労働者を追う主人公の、ちょっと変わったアクションを存分にお楽しみください。

文芸カドカワ公式サイトに寄せたコメント

「文芸カドカワ」はお好みの電子書籍ストアにてお買い求めいただけます。立ち読みのためのコードを埋め込んでみました。ほんの少しですが、ご覧ください。

昨年、2016年は単著を上梓することができませんでした。日本SF作家クラブの会長職にもようやく慣れてきました。今年はやります。まずは新潮社の(こちらも5月から電子配信に切り替わる)yomyomの連載『ワン・モア・ヌーク』、そしてこの『東京の子』です。他にも書き下ろしをいくつか出したいところ。

とにかくいろいろとお待たせしていますが、まずは『東京の子』の連載からお楽しみくださいませ。

Slackを使う

一昨年からある雑誌Slackチームに参加していたが、かなり便利なので自分でもチームを持って、編集者との連絡に使うことにした。用途は以下の通りだ。

  • 編集者との連絡
  • ファイルの受け渡し
  • プロモーションの告知
  • 現状の報告
  • メールの通知

Slackを使うようになった編集者と連絡する回数は増えた。書き下ろしならそれほど連絡に苦労することもないが、月間連載となるとそうもいかない。次回分の原稿を書きはじめるころ、展開について相談をしたくても相手は校了に差し掛かっていて打ち合わせもやりにくい。そんなとき、メモやスケッチを送って一言二言のコメントをもらえるSlackのメッセージはありがたい。メールだと構えてしまうし、やりとりしたい実質的な内容の倍ほども文章を書かなければならない。Slackならば簡単に投稿できる画像や写真、ウェブサイトのURLもメールだと面倒に感じる。

なにより楽になったのはファイルの受け渡しだ。ほとんどPDFではあるが、連載の時は以下のようなファイルのやりとりが発生する。

  1. 作家(私)から:初稿をinDesignで自動組版したPDFで送付
  2. 編集者から:プリントアウトをスキャンした、エンピツ(指摘)入りのPDFが届く
  3. 作家から:第2稿を、自動組版したPDFと、入稿用のフォーマット(最近はinDesignファイルが多い)で納品
  4. 編集者から:編集者、校閲の指摘が書き込まれたPDFが届く
  5. 作家から:PDFに赤字の反映を書き込んで送付(著者校)
  6. 編集者から:赤字を反映させた印刷入稿するゲラのPDFが届く。若干の指摘がある。
  7. 作家から:口頭、あるいはPDFに赤字を書き込んで送付(校了)

こちらから送るファイルはメールに添付できるほど小さなものが多いが、編集者からやってくるPDFはスキャンされた画像の塊だ。「プリントアウトに書き込んでスキャンするなんて!」と思う向きもあるだろうが、紙に書き込んだ指摘の一覧性はAdobeやAppleのPDFリーダーよりも圧倒的に優れているので、私も手書きのコメントが書き込まれたスキャンの方がありがたい。今の所は。

とにかく50枚ほどの原稿でも10MBを超える画像のPDFはメールに添付できず、多くの場合宅ふぁいる便でやってくる。これがちょっと嫌だった。宅ふぁいる便は確かに便利なサービスだが、ファイルをアップロードしてから72時間しかファイルを保存してくれないので、メールを受け取ったらすぐにダウンロードしておかなければならない。出張などに行っていてダウンロードし損ねたことは一度や二度ではない。編集者にもSlackにアップロードしてもらうことで、この不満は解消した。iPad版のアプリからファイルを開き、PDF Expertで開いて閲覧したり、修正のための赤字を入れたりする。そしてPDF Expertから直接Slackに投稿すればいいのだ。

Dropboxでもほとんど同じことができるが、ファイルを所定のディレクトリにアップロードした後でURLを作ってメールかなにかで伝える必要がある。今までは手間とも思っていなかった手続きだが、Slackで直接アップロードするようになってからは、URLを作るのも、メールするのも面倒なことに思えてきた。そしてなにより、メッセージに添付できるSlackでは、保存する場所を決める必要すらないのが嬉しい。今では、自分のメモ書きなどもSlackの自分宛メッセージに投稿することにしている。

使い方の紹介を続けよう。

プロモーションの告知は、専用のチャンネルを作って複数の社の編集者が読めるようにしてある。このチャンネルは海外に出るときには重宝した。期間はいつからいつまでなのか、登壇でご一緒する相手は誰なのか(もしも編集者の知人ならば人となりも聞くことができる)、海外での連絡方法は? そんな連絡をするのにメールを使おうとすると編集者ごとに同じようなメールを書いて送らなければならないが、Slackなら担当者全員が読めるチャンネルに書き込んでおけばいいし、Slackらしくインテグレーションを使って、Googleカレンダーから共有してもいい。

このあたりでお気付きの方もいるかもしれないが、私は自分のSlackチームを有料版で使っている。

Slackは無料でもかなり使えるサービスだ。5GBまでのストレージに、10個までの他サービス連携、直近10,000メッセージまでの検索機能を備えているし、通知のカスタマイズも柔軟に設定できるので、関係のないメッセージに悩まされることもない。業務用のLINEといえばわかるだろうか。だが、無料版のSlackにはオーナーと管理者、そして標準メンバーという三種類のアカウントしかない。標準メンバーは公開チャンネルを全て見ることができるし、参加者の一覧も見ることができてしまうが、私の用途では担当編集者にチームの参加者全員を知らせたくはなかった。将来的には作品ごとにベータリーダーを招いて意見を聞きたいとも思ってもいる。そんな制限されたアカウントを作れるのは有料版だけなのだ。

Slack Pricing(Slack公式ページの価格表)

有料版では、無料版の機能に加えて無制限のメッセージ検索、無制限のアプリケーション連携、チーム参加者一人当たり10GBのストレージが使えるようになる。費用は一アカウントにつき、月あたり$8。年額一括払いすれば$6.67。アクティブでないメンバーの費用が自動的に計算から外れるのは良心的だ。これが週単位になればいうことはないのだが……さすがにそれではSlackのマネタイズに支障が出るのだろう。

有料版にしたことで、比較ページではわからなかったメールの投稿が使えるようになったのは嬉しかった。Slackに受信用のメールアドレスを設定することができ、そこに送られたメールを特定のチャンネルに投稿できる。IFTTTZapierのようなWebパイプサービスを使えば似たようなことはできるのだが、有料版で使えるメール連携はSlackのネイティヴな機能なので扱いやすいし、堅牢さを感じる。この連携で、メールをもらったらすぐに対応しなければならない相手のメールをSlackに飛ばして通知を受けることができる。また、メッセージごとに設定できるリマインダーで、対応を忘れないようにすることもできる。

実際に使ってみなければメッセージベースのやりとりが、どれだけメールよりも楽かということは伝わりにくいかもしれないけれど、とりあえずわたしの使い方を書いてみた。参考になれば幸いだ。

精選版 日本国語大辞典のアプリを購入

iPhoneやiPad用の日本語辞書はいくつか持っている。一番使っていたのがロゴヴィスタの広辞苑第6版だった。気になって自分のブログを検索してみたら、2008年、iPhone 3G用に買っていたようだ。600MB近くの辞書アプリをiPhone 3Gで使うには、iTunesでダウンロードしてからiPhoneに移す必要があった。

広辞苑がキタ!(はてなダイアリーに投稿)

2012年、Gene MapperをiPhoneで書いていたときには、この広辞苑がとても役に立った

今回買ったのは物書堂の「精選版 日本国語大辞典」だ。通常価格7,800円のところ、2017年の1月31日までは4,800円で購入できる。物書きをしているなら迷うことはない。買おう。

このアプリは、小学館が発行する精選版 日本国語大辞典(小学館)の電子版だ。30万の用例と30万の項目は、40年かけて3,000人の専門家の手によって編纂された13巻組の「日本国語大辞典」を凝縮したものだ。お値段は三巻組で45,000円。三巻束ねた時の厚みは20センチほどになる。私も図書館で使ったことがあるが、書架からもってくるのに一苦労。項目を探すのにまた一苦労。びっしりと組まれた文字を読むのに、私は老眼鏡を必要とした。自宅に置いて使うようなものではないし、買っても本棚の飾りになるのは確実だ。それがモニタの脇のiPadで開きっぱなしになっていることにまだ戸惑いを感じているほどだ。

戸惑いの理由はいくつかある。美しい組版と、練りに練られた文章、そして引用される文の美しさだ。

このアプリを開発した物書堂のウェブサイトには、縦書きのテキストレイアウトエンジンから作り直したという美しい組版についても、電子辞書が紙に劣ると言われ続けていた「出会いのなさ」を解消するための方法についても紹介されている。そして冒頭には小学館の「精選版 日本国語大辞典」三巻組の威容がわかる写真も掲載されている。ぜひ訪れて見てほしい。

精選版 日本国語大辞典(物書堂)

物書堂の「精選版 日本国語大辞典」は電子化された書籍の、一つの理想的な形だ。

『オービタル・クラウド』英語版の書影公開

2017年3月に発売される『オービタル・クラウド』英語版が、テック系ニュースサイトのTHE VERGEで紹介されました。書影はこの記事で初めて公開されることになりました。記事を書いてくださったのはAndrew Liptakさん。

READ AN EXCERPT FROM TAIYO FUJII’S UPCOMING SCI-FI NOVEL, ORBITAL CLOUD

いつも思うことなのですが、英語の書籍はタイポグラフィーに手が入っているものが多くて素敵ですね。ヒーローイメージは日本語版に沿って新たに作成されています。

THE VERGEの記事ではプロローグを読むことができます。翻訳者はTimothy Silver。オリジナルの日本語版をお持ちの方はぜひ読み比べてみてください。原文のニュアンスを落とすことなく、コンパクトでスピーディーな仕上がりになっています。まだ数えていないのですが、今回も文字:ワード比は2を切りそうです。短ければいいというものではもちろんありませんが、翻訳者には恵まれているなあ、と思う次第。

「第二内戦」

人工知能学会の30周年を記念して早川書房より発行された『AIと人類は共存できるか?』に、中編「第二内戦」を寄稿しました。

「倫理」「社会」「政治」「信仰」「芸術」――5つの異なるアプローチで、人工知能(AI)が普及した未来社会を描く。SF作家の想像力とAI研究者の最新知見が斬り結ぶ、書き下ろしアンソロジー

本書は5編の小説に5名のAI研究者が作品を解題する、珍しいアンソロジーです。「第二内戦」を群知能の側面から解題してくださったのは、電気通信大学大学院情報理工学研究科教授・栗原聡先生。作品で語れなかった知能の創発に至る部分を語ってくださいました。

「第二内戦」は合衆国初の女性大統領が一般教書演説によって銃規制を強めると発言したために合衆国内が分裂し、一つの国家「アメリカ自由領邦( gun baring ) Freed States of America」が生まれたという設定です。執筆時点ではクリントンの二期目に発生する事態を想定していたのですが、ご存知のように、アメリカの分裂は私の予想よりも4年早く、そして事実無根のデマを振りまいたトランプ大統領の選挙活動によって表面化してしまいました。

至近未来を扱うのは難しいですね。

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