デジタルインク

セイコー スペクトラム(SPECTRUM)[プレスリリース]

SEIKO【SPECTRUM/スペクトラム】[楽天]

GUI、Renderman、PostScript、デジタルインク。これらの優れた技術を生み、そして何一つ利益を生めなかったゆりかごのような組織がある。XEROXパロアルト研究所だ。

AppleやPiXAR、AludusAldus(そして後にAdobeでPDFを生んだ)で現在のコンピューティングを支えている技術を生みながら、ある技術はマーケティングの対象とならず、また技術者に去られた組織がが最後に失った大きな成果がデジタルインクだ。

そのデジタルインクを用いた時計がセイコーからリリースされた。動画

だっせー

薄さと柔軟さを全く活かせていないケース、今時ねじ止めの裏蓋。液晶なんかモノともしない高解像度のデジタルインクの良さをスポイルするモーションタイポグラフィ(口さがない嫁は「パチンコ屋の看板みたいだ」と宣った)。

タッチセンサーは文面だけ見ると、いいねぇ、と思ったが、なんですかこのボタンは。インク面がタッチセンサーになってる仕様じゃないのか。iPodでホイールセンサー(mighty mouseの右クリックも)をン百万台作ってる時代に金属のボタンつけてどうすんだ。

削りだしの裏蓋や、細部加工、海千山千のデジタルインクの実装、量産など、プロトタイプを生産にのせた高い技術と惜しまなかった労力には敬意を払いたい。いや本当によくやったと思う。

でもね、デザインがだめだとすべてを台無しにしてしまうのだな。

テクノロジーのコンセプトを信じきれていないでしょ。500台しか売らないようなエッジな商品に「マーケティング」とか「ターゲットセグメント探し」とかやっちゃってませんか?

デジタルインクは1mmを切る厚みにできる柔軟な素材に、900dpiを超える解像度のイメージを描き出すことができる素材だ。形が変えられない4mmもの厚み(私が昔買ったSwatchに3mmの厚みのモノがある)を持ったダイカストにすることで、素材をスポイルしている。

湾曲した盤面だって、あれだけ厚みをつけていいのなら液晶でも有機ELでも可能なんだよね。どうせ500台しか作らないような製品なら、もっとピュアに、コンセプトを信じてデザインしていればこんな出来の悪いアニメに出てくるようなモノは作れないはずだ。

余談だけど、私は最近1968年製造のロレックス(詳しくないのでよくわからないけど、オイスターデイトと書いてある黒い盤面の自動巻)を使っている。時計産業は当時、精密機械工業の最先端を自負していたんだろう。この時代の時計のデザインには迷いや負い目を感じないんだ。

自らを恃み、信じて作られたプロダクトは美しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。