日本のSFだなぁ

エリ・エリ (ハルキ文庫)

エリ・エリ (ハルキ文庫)

本当のキリスト者やその他の宗教に帰依する方が読んでどんな感想を抱くかわからないが、少なくとも、私は本書で「信仰によって生み出される感動」を感じることができた。ソリッドな設定の中で魅力的な登場人物のコントラストが実に気持ちいい。文庫本で一冊の適度なボリュームでありながら、壮大なテーマを味わうことができる。

章の冒頭に引用されている聖書の一文もまた魅力的だ。イエスとの密約によってイエスを裏切りローマで生き延びるユダ像など、2000年の作品とは思えない洞察力である。最近原典 ユダの福音書を読み終えたばかりなのだが積読本の山から発掘できたのも何かの巡り合わせかもしれない。

日本のSFの特徴ではないかと密かに考えているのだけれど、本書には憎まれてしかるべき悪人が登場しない。「イエスの真実」を扱うときに必ず悪の集団として描かれてしまうバチカン、教皇ですらリベラルな人物として登場するのだ。ある文化グループを、物語の中ですら差別や否定しない、あるいはできないという枷の中で作り上げられた容赦のない物語シチュエーションやプロットに向かうとき、日本という文化を強く感じる。

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