iPhoneで小説を書く(2)

前のエントリー:iPhoneで小説を書く

前のエントリーでは、小説の体裁になるまでiText Padを用いて10,000文字程度まで書き進めたことを紹介した。文章表現の巧さで一気に読ませる短編ならば、恐らくこのまま書き終わるところだったのだろうが、あいにく「Gene Mapper」は短編の域を超えてしまうことが明白だった。そこで、章立てのできるAppを探し始めたのだが……困ってしまった。

日本語版、いや日本人開発者の手による章立て可能なエディタが……ないわけではないのだが、使えそうなものが見当たらない。英語圏ならば星の数ほどとは言わないが「小説を書く」となれば横にバナーの出ているManuscriptをはじめ、StoryistA Novel Ideaのような章ごとにファイルを分割して編集できるエディタが普通だ。脚本ソフトの決定版Final Draftのようなコンテクスト管理を目指しているのだろう。Final Draftに出力できるAppも多い。

余談だが、Final Draftなどの脚本ソフトや映画のストーリーボードを作るソフトは映像機器展示会なんかに行くと一つの分野を作るほどの人気ジャンルだ。登場人物の自動作成機能や、指定したキャラクターのセリフをかきあつめてきてレビューする機能なんか凄く面白い。最近ではForce.comと連携するのはもちろん、ロケハンの予算やらキャスティング用のキャラクターシート、売り込み企画書まで一つのソリューションで賄うグループウェアが人気だね。ガントなんかもあってまさにDirector、Manager用のツールだ。短編や学生の小さなプロジェクトを事例として見せてもらったけど、いいわ。アレなんて思って勤めてる方の仕事で何度か売り込みかけようとしたのだけど「なんで?」「要るの?」という反応がかえってきたのでやめた。きっと日本の映画やテレビ業界にはもっと凄いソリューションがあるのだろう。

それはともかく、iPhoneで一太郎やWordよろしく何万字ものストリームに入力を行うのはあまりに効率が良くないので、縦書きルビのプレビューを諦めて海外製の小説エディタへ移行することにした。いくつか渡り歩いたけれど、iPhoneとiPad、OS X版があるManuscriptに落ち着いた。入力はiPhoneでほとんど行っているけれど、プレビューや章立の変更みたいなことはiPadの方が便利だったからだ。DropBoxへの保存は手動だったが、入力するのがほとんどiPhoneだったので、この段階ではほとんど問題にならなかった。

一万文字程度になった原稿をManuscriptでブツ切りにして、章立てに組み替える作業は楽しく、そして中短編ならば充分書けると確信できた。縦書きでのプレビューは、原稿をDropBoxにエクスポートしてbREADERで読むことにした。この頃からbREADERを使い始めたのだけど、今でも執筆中の縦書きプレビューはbREADERだ。軽快で美しいのがいい。

このときのエディタ遍歴で学んだことは大きかった。海外製のソフトウェアの多くは、作家がエージェントに作品を手渡すところまで、または売り出すまでをゴールと捉えている。ただのテキストエディタももちろんあるが、人気のApp、ユーザーが使って意見を戦わせているAppに共通するのは「ユーザーを作家として扱ってくれる」Appが主流だ。新しい原稿を書き始めるときに「Pitch」と呼ばれる2〜3行の紹介文やSynopsisを書く。「Synopsisの手本はAmazonの説明文だ」「Synopsisを書いたらエージェントにまず連絡」なんて教えてくれるAppもあったな。私は日本の小説家やライターがどのように出版社やエージェント(日本にもたくさん居るんだろうか……一人しか知らないが)にアピールしているのか知らないが、アピールの定型ぐらいはアプリケーションが示してあげると助かる人も多そうだ。

そしてもう一つ「My Great Novel」には大いに勇気づけられた。ManuscriptではないがいくつかのAppで新規プロジェクトの名称が「あなたの偉大な作品」なのだ。能天気に思えるぐらい、自分の作品を信じられなければ書けるもんじゃない。

Manuscriptでは今年の3月末まで4万文字になる程度まで書いたが、販売を意識し始めたこの頃、別の壁が立ちはだかった。EPUBの生成だ。

次回はEPUB生成ソリューションにもなったOS X環境、Scrivenerを紹介する。

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