Compileするエディタ Scrivenerについて(2)

今回はScrivenerのワークフローについて説明するつもりだったのだけど、一番の特徴であるCompileを避けて通れない気がするので、ここから始めることにした。

Scrivenerを起動してFiction > Novelのテンプレートを選んで新規書類を作ると、このような画面が起動する。2ペイン+インスペクタのウインドウがScrivenerの作業画面になる。

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左ペインのバインダには、原稿となるテキストの階層と、設定やPDF、画像、WebサイトやWikipediaなどの資料を保存しておくことができる。エディタは二分割できるので、原稿の別の部分を参照しながら書くこともできるし、下の図のように資料を見ながらも書ける。Webサイトからのクリッピングは書類の中にキャッシュされるので、ネットに繋がっていなくても参照できるのはありがたい。

scrivener-ui-2

テンプレートに戻ろう。Fiction > Novelのテンプレートは、Manuscript(原稿)パート直下のフォルダを章(Chapter)章に見立て、テキストを節(section)とする構造を提供してくれる。このテンプレートで執筆した原稿を、テンプレートに設定されているNovelというCompile(出力)設定で保存すると、表紙や献辞などの前書きに続いて、章のタイトルが挿入され、テキストが連続する部分には節を区切る記号「#」が差し込まれたひとつながりの文ができあがる。この「テキストをCompileする」というワークフローがScrivenerの特徴だ。

Scrivenerには数多くの機能がある。階層化できるテキスト、一見アウトラインプロセッサのような外観やWikipediaへのリンクとキャッシュ、コルクボードでのレイアウト、Dropboxなどのクラウドサービスとの連携を実現する外部フォルダ同期に、差分閲覧もできる履歴のスナップショット、締め切りタイマー、そして軽快なリッチテキストエディタなどだ。いずれも執筆を助けてくれる機能群ではあるが、最大の特徴を挙げよと言われれば柔軟なCompile設定だと答えるだろう。

ScrivenerはCompileの設定によって、プロット専用ツールにも、小説、脚本の執筆環境にも、論文執筆ツールにも、プレゼンの下準備ツールにもなる。出力するファイルはプレーンテキスト、HTML、Word、PDF、Markdown(EPUBもあるが、英語の本を書くのでなければお勧めしない)などから選べる。

Compile時には正規表現を用いて検索置換することもできる。私はエディタで青空文庫の注記スタイルで書いているが、推敲するときは青空文庫の注記をInDesignのタグに変換してテキスト保存し、縦書きのテンプレートに読み込んで印刷するような作業を毎日繰り返している。テキストを入稿するときは出版社ごとに異なるルビや傍点のフォーマットで揃えて入稿する。あらかじめ設定しておけば、切り替えはメニュー一つで行えるので、やりとりが増えても書類を整えるストレスは感じない。フォルダやテキストの本文ではなく、概要となるSynopsisだけを出力すれば、プロットが出力されるのもありがたい。

Compileに話を戻そう。Compileは、ただ文書を繋いで各種フォーマットで保存するだけの機能ではなく、執筆に用いる階層構造を、適切なスタイルにフォーマットする機能も持っている。設定画面のスクリーンショットで示そう。これは「Chapter」がもっとも大きな区分けとなる小説の設定だ。フォルダの階層ごとにどのような見出しをつけるかを決められる。巻、部、章、節の単位に通し番号を振ることもできるし、もちろん見出しなしでも構わない。

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ScrivenerのCompile設定

Screen Shot 2014-12-13 at 21.52.23この設定を変えれば、章の上部構造として「部」を持つ長編小説や、「巻」として本にまとまるシリーズもの、連載中ならば特定の階層のフォルダを「話」の単位を作ることができる。書き出す対象も変更できるので、複数のストーリーを一つのScrivener書類にまとめることができる。シリーズ物をやったことはないが、Kindle連載で〈UNDERGROUND MARKET〉シリーズをやったときには、このように複数の連載シリーズを一つの書類にまとめて管理していた。見ての通り、下部構造はバラバラだが、それでも困ることはない。段落ごとに最下部のテキストを分割したって構わない。

あまりに長いテキストを一つのファイルに突っ込むことに抵抗を示す人もいるかもしれないが、そこは心配しなくていい。原稿用紙にして5万枚に相当するテキストを読み込ませても、ファイルの保存や読み出しの時間はほとんど変わらない(バックアップの時間は延びるが)。安定もしている。私はこの2年で、Scrivenerに向かって5000枚ほど入力しているけれど、その間にクラッシュやなにやらで失ったテキストは100文字程度だ。なにより、適切に階層を作れるので迷子になることもない。書きたい場所を探すのに何十メートル分もホイールを回さなくてもいい。推敲からの反映が楽。これもScrivenerの特徴の一つだ。

まとまりがなくて申し訳ないが、こんな感じにScrivenerを紹介してみることにした。

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